2024年デジタル市場・競争・消費者法とは

2024年デジタル市場・競争・消費者法(Digital Markets, Competition, and Consumers Act 2024)は、英国の消費者法における数十年ぶりの大規模な改正です。この新法の主柱は以下の通りです。

「不公正な商業慣行」の定義の拡大

新法のもと、(1)消費者を誤解させる行為や情報の欠落、(2)消費者の意思決定に過剰な圧力をかける行為、(3)注意義務の怠慢から消費者行動を歪める行為が、新たに「不公正な商業慣行」に該当することになり、結果として、偽レビューその他の操作的な宣伝手法や、誤解を促す「グリーンウォッシング」を使った宣伝に対する規制も追加されました。

サブスクリプション契約

ストリーミングサービス、食材宅配サービス、ソフトウェアサブスクリプションなどを例とする商品、サービス、デジタルコンテンツなどに対して消費者が継続的・定期的に支払いを行うサブスクリプション契約に関する規制も新たに導入されます。

新規則のもと、事業者は、サブスクリプション契約締結の前に、支払い総額・支払い頻度、解約手続き、最低契約期間、自動更新などの全条件の情報を提供しなければなりません。

また、事業者は、サブスクリプション契約の自動更新がされる前に、更新の日付、更新後の条件、全費用、解約方法を明示したリマインダー通知を提供することが求められます。

また、消費者に対して、クーリングオフ期間として、通常のサブスクリプション契約の場合、14日間、長期契約や自動更新されるサブスクリプションの場合はこれを超える猶予を与えることが必須となります。

新たな制裁制度

誤解を招く広告、解約権の不提供、その他の不公正な契約条件など個人に損害を与えたり、競争を歪めたりする新法のもとので違反があった場合には、裁判所は、違反を犯した事業者に対し、違法行為の抑止と被害を受けた消費者への補償を目的とする金銭的制裁を課す権限を持つようになります。

また、2014年に発足した政府機関Competition and Markets Authority( CMA=競争・市場庁)には、新たに、裁判所を経ずに直接違反を調査し、違反に対する罰金、不公正な慣行の停止命令、是正措置の要求などの制裁を課す直接執行権限が与えられます。

罰金の額は30万ポンドまたは事業者の総売上高の10%のいずれか高い方を上限とします。

導入時期

上記の新規則は2024年末以降、段階的に導入されます。消費者に商品やサービスを提供する企業は、移行期間のスケジュールを確認し、早めの対応を図ることが推奨されます。